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東京地方裁判所 平成5年(ワ)20625号 判決 1994年2月22日

原告

宮園自動車株式会社

ほか一名

被告

常松芳男

主文

一  原告らの被告に対する別紙交通事故目録記載の交通事故に基づく不法行為を原因とする損害賠償債務は、原告ら各自について金二一万六八五四円及びこれに対する平成五年七月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員支払債務を超えては存在しないことを確認する。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

一  原告らは、主文同旨の判決を求め、別紙のとおり請求の原因を述べた。

二  被告は、請求棄却の判決を求め、請求原因一ないし九項は認め、一〇項は知らないと述べた。

三  請求原因一ないし九項は当事者間に争いがなく、甲第八号証及び弁論の全趣旨によれば、請求原因一〇項が認められる。

四  そうすると原告らの請求は理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 大工強)

請求の原因

一 被告(昭和二五年八月八日生)は松魂宮城同志会の組員であつて別紙交通事故目録記載の交通事故(以下「本件交通事故」という。)によつて腰部打撲等の傷害を負つたものであり、原告宮園自動車株式会社は本件交通事故を惹起した原告野口辰己の使用者である。

二 本件交通事故の原因は、原告野口辰己がその運転する普通乗用車を進行させる際に前方を注意して進行すべき注意義務を負つているのに、原告野口辰己はこれを怠りその運転する普通乗用車を漫然と進行させたためである。

三 原告野口辰己は民法第七〇九条による損害賠償責任を負い、原告宮園自動車株式会社は民法第七一五条の使用者責任及至自動車損害賠償保障法第三条により損害賠償責任を負う。

四 被告は、本件交通事故により、春山外科病院(新宿区百人町一―二四―五)に頭部腰部右手左下肢左膝打撲の傷病名にて平成五年七月一七日より平成五年八月三一日まで通院(通院実日数二八日)し、その後も春山外科病院へ通院している。

五 ところで、本件交通事故による被告の傷病名は打撲であり、被告の傷病名についてはレントゲンによつても何らの異常もなく、被告の傷病名については何らの他覚的所見がない。

従つて、被告の傷病名は、被告の主訴(主観的訴え)によつてのみ診断されたものである。

一般に他覚的所見のない打撲は受傷後長くとも一か月程度で治癒するものであるから、被告の右傷害は遅くとも本件交通事故より一か月半を経過した平成五年八月末日には治癒したはずである。

よつて、本件交通事故発生から一か月半を経過した平成五年九月一日以降に被告に損害が発生したとしても、平成五年九月一日以降に被告に発生した損害は本件交通事故との相当因果関係を欠く損害である。

六 被告は、本件交通事故により左記のとおり原告らより合計金六四万三九七四円の損害を受けた。

1 治療費 金一六万九五三〇円

春山外科病院の治療費(但し、平成五年七月一日より平成五年八月末日までの分)

2 休業損害 金二九万〇四四四円

被告の主張によると、被告は本件交通事故当時訴外株式会社シーアールエーに勤務し、訴外株式会社シーアールエーより本件交通事故前三か月分の給料金一〇五万円を得ていた旨主張するが、被告の主張する収入は訴外株式会社シーアールエーより所得税を何ら源泉徴収されておらず、被告の収入に関する主張は信憑性がない。

従つて、被告の収入についての損害については、何らの合理的資料が存在しないので、控え目に算定すべきであつて、男子労働者の年令別賃金センサスの六割相当額によることが相当である。そうすると、被告の年間収入額は金三七八万六四八〇円(「男子労働者学歴計年令別賃金センサス金六三一万〇八〇〇円の六割相当額」平成三年度第一巻第一表)となり、被告の一日当りの収入は金一万〇三七三円となり、又、被告の平成五年七月一七日より平成五年八月末日までの通院実日数は二八日間であつて、右二八日間が被告の相当な休業損害期間であるので、被告の休業損害は一日金一万〇三七三円の二八日分である金二九万〇四四四円となる。

三七八万六四八〇円÷三六五日=一万〇三七三円

一万〇三七三円×二八日=二九万〇四四四円

3 慰謝料 金一八万四〇〇〇円

七 過失相殺

本件交通事故は、原告野口辰己がその運転する普通乗用車(練馬五五け二八八)(以下「本件タクシー」という。)を小滝橋通り方面より明治通り方面に向けて職安通りの第二走行車線を進行させた際に、本件タクシーが走行する道路の右側より突然飛び出した被告に、本件タクシーの右側前部を接触させたことにより発生した事故である。

本件タクシーが走行していた職安通りには、本件交通事故当時、職安通りの中央部分にグリーンベルトが設置され又グリーンベルトが設置されていないセンターライン上には工事のため黄色で標示された柵が設置されていて、職安通りの歩行者横断は物理的に禁止されていた。

然るに、被告は、黄色の柵が設置されていて歩行者横断が物理的に禁止されていた職安通りのセンターラインを超え、無理矢理、職安通りを横断したことにより、本件交通事故が発生したのであるから、被告には本件交通事故発生につき重大な過失が存し、被告の過失は少なくとも四割を下らない。

被告の損害に対して四割の過失相殺を行うと、被告の受けた損害は金三八万六三八四円となる。

六四万三九七四円×〇・六=三八万六三八四円

八 損害の支払(金一六万九五三〇円)

原告宮園自動車株式会社は、春山外科病院に対し治療費金一六万九五三〇円を支払済である。

九 従つて、原告らが本件交通事故により被告に対して負担している損害賠償債務は金二一万六八五四円となる。

三八万六三八四円-一六万九五三〇円=二一万六八五四円

一〇 原告らは、被告との間で示談解決をめざそうとしたが、被告は、原告らに対し、被告の窓口と称する吉田某(松魂宮城同志会)を通じて被告の損害を証明する何らの合理的資料を提出することなしに、被告の損害賠償請求債権が多額にある等と称していて示談解決をしようとしない。

一一 よつて、原告らは、本件交通事故に基づく損害賠償債務について、被告に対しては金二一万六八五四円及びこれに対する平成五年七月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員支払債務を超えては負担していないので、その旨の確認を求める。

交通事故目録

日時 平成五年七月一七日午後一〇時四〇分頃

場所 東京都新宿区大久保一―一―七先路上

事故の態様 原告野口辰己は、右日時場所にて、同人が運転する普通乗用車(練馬五五け二八八)(以下「本件タクシー」という。)を小滝橋通り方面から明治通り方面に向けて職安通りの第二走行車線を走行させた際に、本件タクシーが走行する車線の右側より突然飛び出した被告に本件タクシーの右側前部を接触させた。

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